目次
会社の合併と買収(M&A)とは
会社同士が合併や買収を
することをM&Aといいます。
Mergers(合併)& Acquisition(買収)の
それぞれの頭文字をとったものです。
合併は、2つ以上の会社同士が1つの会社になることで、
お互いに同等な関係です。
買収は、一方の会社がもう一方の会社を
買い取って自分の会社の子分にすることです。
そのため、買い取った会社と、買い取られた会社は
同等ではなく上下関係になります。
合併の目的は何?
合併の目的はいくつか考えられます。
例えば、
- お互いの同じ敵(競合相手など)に勝つため。
- お互いに生き残るため。
- 1つになった方が業務効率がよくなるから。
などです。
どんな目的であれ、
合併の場合、1つの会社になっても
お互いに同等な関係を保てるので、
穏便に事を進めることができます。
合併の種類(吸収合併と新設合併)
吸収合併(きゅうしゅうがっぺい)
合併しようとしている2つ以上の会社のうち、
生き残る会社以外の会社は消滅してしまう合併を、
吸収合併といいます。
たとえば、
おもちゃメーカーのタカラとトミーの合併で
タカラトミーになりました。
ほかには、石川島重工業株式会社と
株式会社播磨造船所の合併で石川島播磨工業(現IHI)
になりました。
最近では、コンビニのファミリーマートと
サークルKが合併し、
ファミリーマートという名前になりました。
(サークルKの親会社は、
ユニーグループホールディングスという会社です。)
現在、コンビニ業界の1位はセブンイレブン、
2位はローソンです。
ファミリーマートもサークルKも
お互いに生き残り、
セブンイレブンやローソンに勝つため、
そして、業務の効率アップのための
合併といえます。
これらの合併は、吸収合併になります。
日本で行われる会社の合併は、
ほとんどの場合、吸収合併になります。
新設合併(しんせつがっぺい)
お互いに資本金を出し合って、
新しい会社を設立する合併を新設合併といいます。
新設合併により、
お互いの元の会社は消滅します。
銀行や航空会社など、
国の認可をもらって経営している会社同士は
新設合併になることが多いです。
たとえば、
三井銀行と住友銀行の合併で
三井住友銀行になりましたよね。
この合併は新設合併になります。
買収の目的は何?
買収の目的もいくつか考えられます。
買収は、合併と違ってお互いが上下関係になってしまいます。
買われる=子分になる、ということなので、
それでもいい…という会社でない限り、
いきなり「子分になれ」と言われると、
気分は良くないですよね。
ジャイアンとのび太の関係で
考えてみると、
- ジャイアンがのび太を自分の子分にしたい。
- ジャイアンがのび太の猫型ロボットペット、ドラえもんを自分のモノにしたい。
- ジャイアンが、文句も言わせずにのび太に命令させたい。
などです。
どの目的であっても、
ジャイアンの気持ちがメインになっていて、
のび太の気持ちなんてちっとも考えていません。
本当は、のび太は、
ジャイアンの子分にもなりたくないし、
ドラえもんを手放すこともしたくないのです。
なので、買収となると、
お互いに同意するまでとても時間がかかるのです。
買収する、買収されるまでの道のり
会社同士が合併する場合、
お互いに話し合い協議しながら進めているので、
ケンカになることはありません。
ですが、買収となると、
ほとんど場合、険悪な状態になります。
ここからは、買収する会社を株式会社ジャイアン、
買収される会社を株式会社のび太として
説明していきます。(笑
ある日、ジャイアンは、
のび太のペット、猫型ロボットのドラえもんを
どうしても手に入れたいと思い、
のび太を買収しようと考えました。
「おい、のび太っ!
1億円渡すから、ドラえもんを俺にくれよ!」
と言いました。
ですが、のび太は大好きなドラえもんを
ジャイアンに渡したくありません。
「いくらジャイアンでも、
ドラえもんは絶対に渡さないから!」
のび太じゃなくても、
真正面からの買収は断られるのがオチです。
のび太のモノは俺のモノ作戦
ドラえもんを手にいれる何か方法はないかと
ジャイアンは考えました。
「そうだ!のび太を俺のモノにすれば、
のび太のモノは俺のもの!
だからドラえもんは俺のモノになるぞ!」
なので、ジャイアンは株式会社のび太を
買収することに決めました。
買収を成功させるためには、相手の株を
51%以上持っていなければいけません。
つまり、ジャイアンが
のび太の会社を買収するためには、
のび太の会社の株を51%以上
手に入れる必要あるということです。
それを知ったジャイアンはのび太の株を
買うことにしました。
ここで重要なことが1つあります。
どんな株を買う場合でも、
5%ルールと呼ばれるルールがあります。
このルールは、買収を企んでいるジャイアンにとって
とても面倒なルールです。
5%ルールとは、
買収しようとしている会社の株を5%以上買うと、
どの会社をどれだけ買ったのか、
5日以内に証券取引所に公表しなければならない
というルールです。
つまり、ジャイアンが
株式会社のび太で発行されている株の
5%以上を買ってしまうと、
「ジャイアンがのび太の株を5%以上買っている」
ことがのび太にバレてしまいます。
ですが、5%未満ならバレないので、
ジャイアンはのび太の株を
4.9%だけ買うことにしました。
51%をめざせ!
とはいえ、のび太を買収しようと思ったら、
のび太の会社の株を51%以上
持っていなければいけません。
まだまだ足りないですよね。
そこで、ジャイアンはジャイ子やスネ夫、
スネ夫のいとこなどに頼んで、
各自、のび太の株を4.9%ずつ買うよう
お願いしました。
全員の分を足しても
まだ30%ほどにしかならないので、
ジャイアンは次の手を打つことにしました。
頼む!大株主様っ!
株式会社のび太の大株主(おおかぶぬし)である
しずかちゃんに交渉に行くことにしたのです。
大株主とは、その会社の株を持っている割合が
大きい株主のことをさします。
「しずかちゃんっ!しずかちゃんの持っている
株式会社のび太の株を1億円で買うから、
売ってくれないかな?」
「えっ、いちおくえんっ!?
オッケー、いいよー^0^p」
しずかちゃんがOKを出してくれたおかげで
ジャイアンはさらに株数を増やすことができました。
公開買付け(こうかいかいつけ)- TOB
ジャイアンは、ここから一気に
最後の仕上げに入ります。
個人投資家に対して、「公開買付け(こうかいかいつけ)」を
行います。
公開買付けとは、今売ってくれたら、
今の株価よりも高い値段で買いますよ!
という方法です。
公開買付けのことを、
TOB(テイク・オーバー・ビット)と言います。
ジャイアンは、のび太の会社の株を持っている
クラスのみんなに告知します。
「のび太の会社の株、1株100円だけど、
俺が1株130円で買うから売ってくれよ!」
のび太は焦りますが、こんな条件なら
売ってしまうクラスメイトも出てきます。
ジャイアン自身が購入した4.9%の株と
ジャイ子やスネ夫、スネ夫のいとこに
それぞれ4.9%ずつ買ってもらった株、
大株主だったしずかちゃんから買った株に、
クラスメイトから買った株など合わせて
51%を超えると、
ジャイアンは、
のび太買収大成功!!
になるわけです。
その昔、ホリエモン率いるライブドアが
ニッポン放送を買収しようとしたときには、
連日、大きくニュースに取り上げられていました。
実は、こういう感じのことが
行われていたんですね。
それにしても、ジャイアンに買収されることを
のび太は阻止できなかったのでしょうか?
しずかちゃんにまで裏切られて
のび太が気の毒です。
株を51%まで買われないよう反撃作戦
安心してください。
買収を企てているジャイアンに
コソコソと株を買われないよう、
のび太ができる防御法はいくつかあります。
買収防衛策その1:ポイズン・ピル
ポイズン・ピルは、毒を盛るという意味です。
「僕を食べると、お腹壊すよ!」です。
すでに株主になっている人たちに、
新株予約権(しんかぶよやくけん)という権利を
渡します。
新株予約権とは、自分が株主になっている会社が
買収されそうになったら、新しく株券を
発行してもいい、という権利です。
ジャイアンがのび太の株を51%持ったとしても、
のび太には新しく株を発行する権利があるので、
のび太の会社の全体株数が増えることになります。
そうなると、ジャイアンが持っている株は
51%を下回る可能性が出てくるわけです。
ジャイアンの舌打ちが聞こえてきそうですが、
ジャイアンが諦めるのを期待することができます。
買収防衛策その2:ゴールデンパラシュート
ゴールデンパラシュートは、黄金の落下傘という意味です。
「僕を食べてもいいけど、もっとお金がかかっちゃうよ!」です。
買収された会社の取締役が退職する場合、
その退職金として通常の数倍の現金を支払う、
という条件を付けることです。
そうしておけば、買収した会社から
多額の現金がなくなってしまうので、
買収する方にとっては嬉しくありません。
ジャイアンがのび太の会社を買収すると、
のび太パパやのび太ママなど
株式会社のび太の役員たちを
放りだそうとするでしょう。
ですが、
のび太の会社にあった現金は
自分のものにしたい!と思うはずです。
そこで、買収によって、
のび太パパとのび太ママが追い出された時は、
通常の退職金の(たとえば)5倍の
2億円をパパとママにそれぞれ払うこと!という
ルールをつけておきます。
ジャイアンにしてみたら、
のび太を買収した時点で
多額の現金がなくなってしまいます。
またもやジャイアンの舌打ちが聞こえてきそうですが、
ジャイアンが諦めるのを期待することができます。
買収防衛策その3:マネジメント・バイ・アウト – MBO
マネジメント・バイ・アウトとは、
会社の経営陣たちが自分の会社の株を
大量に買い占める方法です。
「食べられないところに逃げよう!」ですね。
上場をキープするために必要な条件の一つとして、
「会社には、一定数の株主がいなければならない」
ことがあげられます。
それなのに、
一人の株主(自社)で買い占めてしまうと
ルールを破ったことになるので、
上場廃止になってしまいます。
上場廃止とは、
証券取引所で自分の会社の株が
売買されなくなる、ということです。
そうなれば、買収されるかも!
という心配からようやく解放されます。
のび太、のび太パパ、のび太ママという経営陣が、
自社の株をたくさん買い占めてしまえば、
たとえ上場廃止になったとしても、
ジャイアンの買収行為に怯えることはなくなる、
ということですね。
石川県では、ヤギコーポレーションが
マネジメント・バイ・アウトを行い、
上場廃止になりました。
買収防衛策その4:パックマン・ディフェンス
パックマン・ディフェンスとは、
買収される側が、逆に買収しようとしている会社に
買収を仕掛ける方法です。
「食べられる前に、食べてやるー!」です。
ゲームのパックマンに由来していて、
いつもは追われる立場のパックマンが、
一定条件を満たすと、今度は敵を追いかけ回すから、
この名前がついたようです。
買収されることに怒り狂ったのび太が
ジャイアンに反撃すると思えば
分かりやすいですね。(笑
買収防衛策その5:ホワイトナイト
ホワイトナイトは、買収しようとしている会社ではない
別の会社に、もっと有利な条件で買収してもらう方法です。
「どうせなら王子様に食べられたい!」です。
オリジン東秀という会社は、
お惣菜や弁当の製造・販売をしている会社ですが、
オリジン東秀を買収しようとしていた
驚安の殿堂ドン・キホーテが敵対的買収に来ましたが、
より良い条件を提示したイオン株式会社に
先に買収されることにしたのです。
敵対的買収とは、相手の同意もなく
いきなり買収しようとすることです。
横暴なジャイアンの横から
白馬に乗った出木杉くんが登場し、
「のび太くん、困っているようだね。
僕がのび太を買収してあげるよ。
でも、安心して。
のび太の大事なドラえもんには
手を出さないからね。」
と言われれば、出木杉くんになら
買収されてもいいかな、と
のび太の心も揺らいでしまいます。
出木杉くん、まさに白馬に乗った王子様ですねー。(笑
まとめ
さて、今回は会社の合併と買収、M&Aについて
学習しました。
消費者にとっては、便利になる
安くなる、のであれば
合併だろうと買収だろうと関係ないのですが、
会社が生き残るためには、
M&Aは必要な手段と言えそうです。
- 会社同士が合併や買収をすることをM&Aという。
- 合併には、吸収合併と新設合併がある。
- 買収は、合併と違ってお互いが上下関係になる。
- キーワード:公開買付け(TOB)
- キーワード:マネージメントバイアウト(MBO)