総合商社の伊藤忠と、その傘下で
スポーツ用品販売大手のデサントの
泥沼試合に一旦の幕引きが。
伊藤忠が「無理矢理」に言うことを
聞かせた、というイメージの残る
敵対的TOBが炸裂。
中身を振り返っておこう。
敵対的TOBの経緯
この泥沼に発展したもともとの
経緯は、デサントの経営方針。
デサントは一時収益悪化で
経営的に苦しい時代があった。
そのときに手を差し伸べて
くれたのが、伊藤忠だった。
直接の資本注入でデサント株を
購入することで、資金面を助けた。
これにより、デサントは経営危機を
脱することになり、業績もなんとか
回復に向かうことになった。
30%を超える筆頭株主になった
伊藤忠だったが、あくまで経営は
デサントに任せることになった。
ところが、復活したデサントの
経営陣は、業績拡大のために
韓国市場を攻め続けた。
業績回復の要因となったのが
韓国市場での売上だったので、
デサント経営陣からすれば正しい一手を
打ったという感じだった。
ところが、伊藤忠から見れば
韓国市場に偏った売上構成では
先を見据えて考えるとよろしくない、
と意見を述べた。
最初はお兄さんのような立場から
デサントの経営方針に関して
意見をした程度だった。
デサント側は、この業績回復は
自分たちの功績によるもので、
韓国市場以外もちゃんとやってますよ、と
反発したところから始まった。
伊藤忠からの提言は幾度となく
行われたが、デサントは無視し続けた。
言い方は悪いが、「口を出すな」と
言わんばかりだった。
伊藤忠の考え
伊藤忠側の視点で考えれば、
窮地を救ってやったはずの
デサントが、恩義を感じていないと
写った様子。
まぁ、恩義を感じているかどうかは
別としても、デサント株の30%を
超える株主である以上は、デサントの
業績をもっとあげてもらう必要がある。
今の好業績は長く続くものではない、
もっとこうすべきだ、と提言したのも、
デサントの業績が伊藤忠の業績に
直結するから。
にもかかわらず話を聞いても
くれないので、最終手段として
TOBを実施する流れになった。
敵対的とまで言われる展開を
実施することになった背景には、
今のデサントの経営方針について
「危険」を察知したことにほかならない。
どちらが正しいとかそんな問題では
ないが、憎しみの末のTOBとか
そんな話ではない。
あくまで、業績拡大のための、
いわゆる「大義」のための一手だった。
本来であれば、TOBされる前に
十分に協議すればよかった。
デサント側では、その協議すら行う
ことをしなかったという強硬姿勢に
問題があったように感じる。
結果、国内初の敵対的TOBの
成功というなんともおかしな
構図が完成した。
今後のM&A市場に影響
伊藤忠とデサントの問題は、
ひとまず終焉した。
そして、日本市場の中で
「敵対的TOB」が初めて
成功した案件として名前を残す。
と、各種ニュースで言われて
いるようだが、そこまで大きな
敵対的TOBでもない。
当初から30%を超える株式を
保有していた伊藤忠が、40%を
超える比率になった程度。
第三者的に思うのは、30%もの
筆頭株主がいるのなら、その傘下
企業というか、グループの一員。
親の言うことはちゃんと聞けよ、
と思ってしまう。
反抗期の息子のように独自路線を
貫き、今までの恩義も一切考えず。
悪い言い方で言えば、子供の
自主性を尊重せず、力でねじ伏せる
親の教育はどうなのか、と批判が。
良い言い方をすれば、息子が道を
踏み外す前に、強制的に親が修正を
行った、子供思いの行動。
だが、よく考えてみると両者は
親子の関係ではない。
株式理論で言えば、「傘下」。
自主性を尊重されても、大きな
決断の権限はあくまで株主のもの。
株を持たれた時点で、経営の
自由度が下がることも明白。
そもそも、株を持たれる要因となった
業績不振を招いた自分たちの責任。
資本主義社会の中で当然の考え方だと
思うが、それが「敵対的」と言われる
のは疑問が残る。
まぁ、ゴタゴタが一段落したので、
今後のデサントの経営方針の転換には
注目したいところだ。