昨年より取り沙汰されている
天皇陛下の生前退位について。
たまに取り上げられたりしているが、
天皇陛下ご自身のお身体の問題も含めて
退位したいというご希望が報じられた。
一般人としては、身体に無理をするくらいなら、
別にいいじゃん、と簡単に考えてしまうが。
問題になっている論点はまた違うところ。
今日はそこらへんを。
そもそもの経緯
分かりやすくするために、
難しい言葉は省いて説明しよう。
昨年8月、天皇陛下自らの「お気持ち」として
テレビなどでも公開された。簡単にいえば・・・
「高齢になってきて、天皇陛下としての
仕事が厳しくなってくるので、
今のうちに天皇陛下の立場を譲りたい」
という内容。
天皇陛下といえば、「国の象徴」という立場で、
様々な公務に赴かれている。
被災地への視察や海外皇族との面談など、
意外とハードなスケジュールをこなす。
高齢をおして公務をこなしている姿は
ニュース等で見ているので、
「身体が心配」なのは、誰の目から見ても思う。
国民のほとんどが、生前退位を良しとする
世論調査もあるが、問題視されているのは
法律的な話だった。
天皇と政治の関係
遡ること300余年、明治維新の時代に
天皇と各地の武将が覇権争いをしていた。
徳川幕府が大政奉還という、
いわゆる「覇権」を手放すという流れの中で、
政治と天皇制度がくっきり分かれた歴史がある。
現在では、天皇と国の政治は完全に分断され、
言い方を変えれば天皇は政治に口出しができなくなった。
いいか悪いかの議論はおいておいて。
そして今回の話に戻す。
天皇のお気持ちは、政治には関係ないじゃん!
と思うかもしれないが、思わぬところで
「政治介入」と言われた。
天皇のあり方は憲法に定められている
現在の「国の象徴」である天皇陛下に対して、
憲法で様々な事柄が決められている。
例えば、公務に関すること、財産に関すること。
国の予算、いわゆる税金を使うので、
規定を作ってその規定通りの支出にしようということ。
そして今回の「生前退位」に関しては、
憲法には書かれていない。
いわゆる、想定外の話だった。
「じゃあ、憲法に付け足せばいいんじゃない?」
と簡単に思ってしまうが、そこが問題の根底だった。
天皇の政治不介入
天皇は政治に口出しをしない、という制度のもと、
天皇陛下も政治に口を出すつもりもない。
しかし、今回の生前退位のご意向を踏まえて
「憲法を改正」ということになれば、
国会の承認を経て憲法改正が行われることになるので、
「天皇の一言で政治が動いた」という事実が残る。
この点を問題視している人がいるということ。
この事実が歴史上で刻まれることになり、
今後も天皇が何か言われれば、それに応じて
国会が動く、という体制になっていくのではないか。
そうすれば、実質の支配は天皇にあることになって
しまうのではないか、という考え方。
言っていることは分かるけど・・・
という思いの方も多いだろう。
現在の流れでは
上記の考え方も踏まえて、
今回は「憲法の改正」ではなく、
「特例法の制定」にすることで話が進んでいるらしい。
やむを得ない事情により、「今回だけは特別ね!」
という形にすることで、天皇の政治介入が
進むことへの対策とした。
今回だけの件でいえば、なんとなくの
ゴールは見えている様子だが、
問題はここで終わりではなかった。
生前退位後のいろいろ
天皇陛下が生前退位を行ったと仮定すると、
その後のいろいろなことが変わってくる。
例えば年号。
平成31年から新年号になることで話が進んでいる。
まぁでも、年号が変わるだけならそこまで問題は大きくない。
生前退位した後の天皇陛下のお立場。
現在の天皇陛下や、後継ぎとなる皇太子。
ここまでは聞いたことがあると思うが、
皇太子が後を継いで天皇陛下になるということなので、
じゃあ今までの天皇陛下はなんて呼べばいいの?という問題。
元天皇陛下?前天皇陛下?
そして、その立場が現在の憲法には
記載が無いので、新しく追記しないといけない。
お住いなども含めて、今までの予算とは
違うお金がかかってくることにもなる。
税金が使われることになるので、
確かに慎重になってくる。
そして、生前退位後の問題として、
その後の跡継ぎ問題もある。
現在の憲法では、天皇陛下になる人を
明確に定めているが、その要件に
合致する人が将来的にいなくなるという問題。
いなくなれば、天皇陛下が存在しない状態に
なる、それこそ大問題。
憲法改正が必須だが・・・
すべての問題をクリアするには、
様々な憲法の改正が必要になってくる。
一般人からすれば、簡単に
「憲法変えればいいじゃん」と思うが、
憲法改正には、まずは議会での3分の2の同意を得て、
国民投票で過半数の同意が必要という、
高きハードルがある。
結果がどうこうの問題ではなく、
国民投票には多額の税金が使われるので、
おいそれと国民投票に踏み切れない。
現在の安倍政権では、国民投票無しで
機動的に憲法改正が出来るようにしようという
動きがあるが、それを認めると今度は
与党の一言で憲法が変わってしまうという
事態にまで発展する。
う〜ん、難しい・・・
まとめ
この問題に限った話ではないが、
どちらか一方の考え方を尊重すれば、
もう一方の考え方を無視することになる。
うまくその折衷案を模索しているが、
「白か、黒か」という議論に「灰色」という
結論を出すことがいいのか悪いのか。
思想や哲学の問題にまで発展する話題。
経済とは全く違う話。
自分の収入には関係ない話・・・
どう捉えるかは個々人の価値観次第。
ただ、こんな内容なんだと知っておくことは重要。