エアバックのリコール問題で
ニュースを賑わせていた「タカタ」が、
民事再生法の適用を申請した。
大規模な負債総額で、様々な影響が
ありそう。でも、倒産ではない。
あくまで、民事再生法の適用。
さて、このタカタという会社の経緯から、
民事再生法までの流れや、
そもそも民事再生法って?を
解説していこう。
まずはタカタという会社
元々はシートベルト製造の会社。
2006年に東証へ上場を果たし、
そこから売上は順調に伸ばしていた。
中でも、エアバック製造の売上が
全体の売上の4割にまで成長するなど、
タカタの成長はエアバックが牽引していた。
ちなみに、エアバック・シートベルトともに
世界シェア20%程度。
別事業として、チャイルドシートの製造なども
行っていた。
ところが、2008年頃からたびたび
エアバックの不具合が報告されるようになる。
エアバックがひとりでに破裂し、
その際に金属片などが飛び散るといったもの。
この事故などで、死傷者も出ていた。
リコールが次々におこり、
リコール対象車数は年々増加していた。
そして2014年、アメリカの行政機関が、
タカタに対して約240億円の制裁金と
対象のエアバックすべての修理を命じた。
製品の粗悪さと、企業体質の改善が見受けられなかった
こともあり、お得意先のホンダなどからは
取引停止措置まで行われることに。
そして、世界中のリコール対象が1億台を超え、
その費用を計算すると1兆円にも達することになり、
民事再生法の適用の申請に至った。
よく聞く「民事再生法」と「会社更生法」
今回のタカタは、「民事再生法」。
経営陣はそのままで会社経営を存続しながら
破産手続きを行う方法。
一方の「会社更生法」は、経営陣の退任が必要で、
代わりに管財人が経営にあたり、財産の処分など
を進めていく。
どちらも破産手続きには変わらないが、
破産する原因をつくってきた経営陣が
残るかどうかが大きな違い。
経営陣の保身を考えての民事再生法なら、
債権者の協力が得られないケースもある。
その昔、株式会社マイカルが民事再生法の
適用を申請したが、メインバンクなどが
経営陣の残る方法を不服として、認めず、
会社更生法に切り替えられたケースもある。
つまり、今回の破産は、今までの経営陣が
自社財産の処分やリコール問題の対応などを
引き続き行うことが前提。
なぜ今になって申請したのか
リコール問題は大きな波紋をよんでいた。
特に、際限なく拡大するリコール費用が
既にタカタだけの資金では賄えないことは
明白な状況だった。
タカタは、
「俺らも悪いかもしれんけど、
メーカーさんもチェックしなかったでしょ。
一緒に責任とってよ」
と言って、車メーカーなどもリコール費用の
負担をすべきと主張していた。
ホンダなどはタカタの第7位の株主で、
取引も密接に行われていたので、
市場の予想も「車メーカーが助けるだろう」
という見方が広がっていた。
今回の民事再生法の適用は、
車メーカーから見捨てられた格好。
どこの子会社というわけでもなかった
タカタには、救いの手は差し伸べられなかった。
もし仮に、トヨタの子会社などになっていたら、
トヨタが一緒になって再建を目指していたかも
しれない。
「独立系」だったからこそ、儲けも自社で
独り占めできた分、問題があれば切られる。
自動車メーカーは予見していた?
車部品で必ず必要なシートベルトや
エアバック。
大企業の車メーカーなら、自社で生産も
できたはず。
それをせずに、独立系のタカタ製品を使用
していた背景には、今回のようなケースを
想定していたのかもしれない。
「命に関わる部品なので、死亡事故などの
問題が発生したら、タカタのせいにできる」
「何かあったとき、独立系ならバッサリと
切り捨てられる」
こんな会話があったかどうか、
今となっては知ることもできない。