先週の金曜日の話になるが、
日銀が久しぶりの金融オペを行った。
今回も債券の「指値オペ」で、
国債の長期金利が上昇するのを抑制するために
無制限で買うというもの。
人にお金の勉強を教えるという
経験上、この内容を理解できる人は
少ないはず!と思い、解説の記事を
書こうと思う。
内容が理解できる人は、
それなりに金融の知識があると
思ってもいいと思う。
長期金利ってなに?
まずは言葉を理解しよう。
通常、長期金利は市場で決定される。
つまり、買いたい人が多ければ
債券価格が上昇し、金利が下がる。
この説明自体が意味がわからない
という人も多いだろうが、
ここでは割愛する。
債券の市場についての勉強は
少しだがサイト内(債券ってなんだろう?)にあるので、
そちらを参照していただきたい。
債券市場の鉄則として、
「債券単価が上昇すると、
金利が下がる」というものがある。
債券単価は株などと同じで、
人気があって欲しい人が多ければ
価格は上がる。
逆に、欲しい人が少なく、売りたいと
思っている人が多ければ、価格は下がる。
そして、価格に伴い金利も上下する。
こうして、金利が決定されていく。
金融オペの種類
日銀が介入を行う金融オペ、
正式名称は「公開市場操作(オペレーション)」で、
大きく2種類がある。
市場にお金をタレ流しにして、
お金を余らせる。ダブつかせる。
こうすれば、お金に困る人が少なくなり、
「じゃあ、余ったお金は投資しよう」
となって、安全な債券が買われる。
買われれば価格は上昇し、金利は低下する。
今回の日銀の指値オペは、これ。
逆の場合もある。
市場からお金を吸収し、お金自体を
希少価値の高いものにしていく。
お金が無いので、目先の生活に
使う方が多くなり、投資に回らない。
むしろ、今まで債券を保有していた人も
目先のお金が必要になり、売却して現金化する。
売られれば価格は下がり、金利は上昇する。
この場合は、日銀は国債の売りを行う。
慣れていないと分かりづらいと
思うが、中身を端折って言えば、
日銀の金融オペは
「金利を下げる」ことと
「金利を上げる」ことがある。
今回は「金利を下げる」のが目的。
実はアブナい手法
日銀による金融オペ、実は昔から
行われているものではない。
初めて行われたのは2016年11月17日で、
今から5ヶ月前。
それ以前に行われたことは
一度も無かった。
今までは、「金利は市場が決定するもの」
というある意味で暗黙の了解があった。
この暗黙のルールを壊してまで
日銀が介入を行うことになった経緯も
あるが、まぁ、それも割愛する。
とにかく、金利は国内の金融機関や
年金保険、そして国外の機関投資家の
お金儲けに必要なもの。
それに、日銀が介入すること自体が
タブーだった。
この金融オペにより、日銀の意思一つで
国内外の機関投資家を太らせることも
痩せ細らせることもできるようになった。
なぜ日銀は金利を下げたかった?
さて、ここからが本題。
日銀が金利を下げたい理由は何か。
金利を「下げたい」のではなく、
「上げた」くなかったのだ。
金利が上がれば、国内外の機関投資家は
「日本の円って、金利高いじゃん。
なら、日本円にしとこう。」という。
海外資産を売却し、得た資金で
日本円を買い、国債に変える。
この流れが続けば、円は人気となり
価値が上がる。そう、「円高」になる。
日本企業の7〜8割は輸出企業で、
円高になれば業績が悪化する。
日本の経済を考えた時に、
円高よりも円安になってもらわないと
企業が儲からない、ということ。
要は、日本企業を守るために
円安にしたかった。
円安にするために、金利を下げたかった。
金利を下げるために、国債を買い漁った。
それなら、いいことなんじゃないの?
日本企業が潤えば、日本国内のお金が増える。
国民にとってすれば、いいこと。
しかし、その分外国の企業が損をすることになる。
外国からは、「金利を操作したらダメだろ!
市場に介入するなよ!」
と文句を言われることになる。
現に、トランプ大統領も「日本の円安誘導」
に対して、批判している。
デフレ脱却を目標に動く日銀と安倍政権。
アベノミクスとしても、円高による企業収益の
悪化で株価の大幅な下げは御免被りたい。
周りから文句を言われつつも市場操作を
行う日銀の姿勢に、今後も批判が集まるだろう。