商社大手の伊藤忠と、長年
蜜月の関係だったとされるデサント。
この両者の関係が悪化し、
敵対的TOBにまで発展。
背景と中身を確認しておこう。
デサントの危機を救った伊藤忠
デサントは、スポーツ用品大手。
アディダスなどの日本での販売権
などを持っていた会社だ。
かつての話だが、アディダスの
日本での販売権の権利が切れる
ことで、経営危機に陥ったことがあった。
そこに救いの手を差し伸べたのが
伊藤忠商事だった。
資金援助として、デサントの
株式を引き受けることで株主となる。
伊藤忠商事のグローバルな
販路を活用し、デサントは
売上を順調に上げていった。
と、ここまで聞いていると
デサントは伊藤忠に救われた、
と思うだろう。
というか、まさに救われていた。
命の恩人だ。
ところが、今回の敵対的なTOB。
両者には何があったのか。
溝が深まっていく経緯
デサントの窮地を救った伊藤忠は、
経営再建のために経営陣を送り込んだ。
伊藤忠出身の経営陣が見事に
経営を立て直し、デサントは
復活を遂げる。
そればかりか、伊藤忠商事の
ルートを活用し、業績を上げる。
20年弱という長い間、伊藤忠商事
出身の経営者がデサントを運営してきた。
ところが、長期間の外部からの
トップをよく思わないのが、
いわゆる生え抜きの存在だった。
「筆頭株主というだけで
でかいツラしやがって」
そんなことを言っていたのかは
分からないが、胸中はそんなところだろう。
窮地を救ってくれたと恩義を
感じている当時のデサント会長が、
亡くなった。
それをきっかけに、息子の社長は
伊藤忠に相談もなく、伊藤忠出身の
経営陣を蚊帳の外に出し始めた。
伊藤忠からすれば、経営陣に
伊藤忠出身者がいなくても、
うまくやってくれればいい。
実際、息子の代に変ってからは
業績も順調に推移。
ところが、この好業績の中身が
韓国での売上に依存していることを
度々警鐘を鳴らし、警告していた。
「自国の売上伸ばさないと。
海外ばっかりやってたら、後から
キツイよ」
「いやいや、業績は順調に
伸びてるんだし、文句言わないでくれる?」
こんな対立が浮き彫りになってきた。
そして、伊藤忠からのアドバイスを
無視し、独断で他社との業務提携などを進める。
そして、伊藤忠側では
「このままだと、デサントまた
やばくなるよ。早めに手を打たないと」
「でも、デサントは伊藤忠からの
経営陣を嫌がってるんでしょ。
聞く耳も持たないでしょ」
「まじかー。じゃあ、どうする?」
「無理やり経営陣になろうか。会社を
乗っ取って」
「あー、それいいね。じゃあ、
株を買い占めて40%超えまでいこう」
こんな流れかどうかは分からないが、
こうして険悪ムードから一気に
開戦ムードに発展した。
敵対的TOBって?
TOB、いわゆる公開買付け。
ある銘柄の株を買い進める際に
使われる手法だ。
たいていの場合は買収合併の際に
使われることが多い。
今回のTOBの目的は、デサント株の
30%くらいを持っている伊藤忠が、
40%を保有することによって、
経営での大きな権利を獲ること。
しかし、聞く耳も持たないデサントに
対しては、事前の相談もせずに
強硬手段に出た格好だ。
そんな強硬策に反発する
デサント側は、伊藤忠に対して
「仲良くやりましょうよ」と
対話での解決を提案。
しかし、長年伊藤忠のアドバイスを
無視していた関係性なので、先行きは
暗雲が立ち込める。
しかも今回のTOBは、市場価格の
1.5倍という価格。
伊藤忠の本気度が伺える設定だ。
デサント側は防衛策を模索するが、
おそらく難しいだろうという予想。
このまま敵対的TOBが完了すれば、
デサントは経営権を失うことになる。
両者の殴り合いが始まったが、
伊藤忠に分があるような雰囲気。
さて、今後の動向に
注目しておこう。